ベイトリールのメンテナンス完全マニュアル！釣行後の水洗いと注油ポイント
「最近、キャストした時の飛距離が落ちた気がする」 「巻くときにシャリシャリと異音がする」 その原因、もしかするとメンテナンス不足かもしれません。
構造が複雑なベイトリールは、スピニングリール以上にメンテナンスの影響を受けやすい道具です。特に、回転性能を左右するスプールベアリングや、汚れが溜まりやすいレベルワインダーのケアは、快適な釣りを続けるために欠かせません。
本記事では、初心者でも迷わずにできるベイトリールのメンテナンス方法を解説します。釣行後の水洗いから、性能を回復させる注油ポイント、やってはいけないNG行為まで、リールを最高の状態に保つための知識をお伝えします。
ベイトリールにメンテナンスが必要な3つの理由
なぜ、面倒なメンテナンスをわざわざ行う必要があるのでしょうか？その理由は「性能維持」と「トラブル防止」に集約されます。
- 飛距離の維持: ベイトリールの飛距離は、スプールを支えるベアリングの回転性能に直結します。古いオイルや汚れを除去し、新しいオイルを注すだけで、キャストフィールは劇的に回復します。
- ギアの寿命を延ばす: レベルワインダーや内部ギアのグリスが切れると、パーツ同士が直接摩耗し、ゴリ感や破損の原因となります。
- 塩ガミ・固着の防止: 海水での使用後、放置すると塩分が結晶化し、ハンドルが回らなくなったり、クラッチが切れなくなったりする「塩ガミ」が発生します。これを防ぐには水洗いが必須です。
【STEP1】釣行後の基本！正しい「水洗い」の手順
海で使用した場合はもちろん、淡水の場合でも汚れを落とすために水洗いは必要です。ただし、ベイトリールは構造上、内部に水が入りやすいため注意が必要です。
1. ドラグを締める
ドラグワッシャーへの浸水を防ぐため、スタードラグを時計回りに回して完全に締め込みます。
2. 冷水シャワーで洗う
温水（お湯）はグリスを溶かしてしまうため、常温の真水（シャワー）を使用します。
- 上から流す: 真上から優しく水をかけます。横や下から強い水流を当てると、内部に水が侵入しやすいため避けてください。
- スポンジで拭く: 表面の汚れをスポンジや指で優しく落とします。
3. 水没（ドブ漬け）はNG！
バケツに水を溜めてリールを沈める「ドブ漬け」は、内部のグリスが流出し、逆に汚れを内部へ押し込む可能性があるため推奨されません（※メーカーの説明書で推奨されている一部機種を除く）。
4. 乾燥させる
洗浄後はタオルで水分を拭き取り、風通しの良い日陰で乾燥させます。スプールを外しておくと、内部まで乾きやすくなります。
【STEP2】オイルとグリスの使い分けと注油箇所
リールが乾いたら、各パーツに適した油を注します。ベイトリールには「オイル」と「グリス」の2種類を使い分ける必要があります。
役割の違い
- オイル（低粘度）: サラサラしている。回転が速い部分（ベアリング、シャフト）に使用。
- グリス（高粘度）: ドロっとしている。負荷がかかる部分（ギア、レベルワインダー）に使用。
注油すべき4つのポイント
- スプールベアリング（オイル）
- 箇所: サイドプレートを開けてスプールを取り出すと見える、軸受けのベアリング（本体側とサイドプレート側の2箇所）。
- 方法: わずか1滴で十分です。注ぎすぎると回転抵抗になり、飛距離が落ちます。
- レベルワインダー（グリス）
- 箇所: ラインを左右に動かすウォームシャフト（溝が切ってある棒）。
- 方法: 古いグリスや汚れを綿棒で拭き取ってから、新しいグリスを薄く塗布します。
- ハンドルノブ（オイル）
- 箇所: ノブの根元の隙間。
- 方法: 隙間にオイルを1滴注し、ノブを回して馴染ませます。
- メカニカルブレーキノブ内（グリス）
- 箇所: ノブを外すと見える、ピニオンギアの先端が当たる部分。
- 方法: 摩耗を防ぐために少量のグリスを塗ります。※ベアリングがある場合はオイルを注します。
メーカー別（ダイワ・シマノ）の注意点
基本的な構造は同じですが、メーカー独自の機構については取り扱いに注意が必要です。
DAIWA（ダイワ）：マグシールド
ダイワのリールには、防水・防塵技術「マグシールド」が搭載されているボールベアリングが使われていることがあります。
- 注意: マグシールドベアリングには絶対に注油しないでください。 オイルを注すと磁性流体が流れ出し、機能が損なわれます。
SHIMANO（シマノ）：DCブレーキ
シマノのDC（デジタルコントロール）ブレーキ搭載機の場合、DCユニットの取り扱いには注意が必要です。
- 注意: DCユニット（コイル部分など）は精密電子部品です。水洗いは可能ですが、ブラシでこすったり、強い衝撃を与えたりしないようにしてください。接点部分の水分は綿棒でしっかり拭き取りましょう。
メンテナンスの頻度とオーバーホール
日常メンテナンスの頻度
- 水洗い: 釣行ごとに毎回。
- 注油: 3〜5回の釣行に1回程度。または「飛距離が落ちた」「異音がする」と感じた時。
- ※レベルワインダーは汚れが溜まりやすいため、こまめな清掃がおすすめです。
オーバーホール（分解清掃）の目安
内部のメインギアやドラグワッシャーのメンテナンスは、分解が必要です。しかし、初心者の分解は「バネを飛ばす」「元に戻せない」といったトラブルの元です。
- 目安: 1年に1回程度、または「ゴリ感」などの異常を感じた時。
- 方法: 釣具店を通じてメーカー修理に出すか、専門のオーバーホール業者に依頼しましょう。プロの手で洗浄・グリスアップされると、新品のような巻き心地が蘇ります。
まとめ
ベイトリールのメンテナンスは、釣果（特に飛距離）に直結する重要な作業です。
- 釣行後は必ず水洗い: 冷水シャワーで塩分を流す。
- スプールベアリングにはオイル: 1滴注すだけで飛距離アップ。
- レベルワインダーにはグリス: 汚れを拭き取り、摩耗を防ぐ。
まずはこの3点を習慣にするだけで、リールの寿命は大きく変わります。大切な道具を長く使い続けるために、ぜひ次回の釣行後から実践してみてください。
FAQ
Q1. スプレータイプのオイル（5-56など）は使えますか？
いいえ、おすすめしません。ホームセンターなどで売られている浸透潤滑剤（KURE 5-56など）は、プラスチックパーツを劣化させたり、既存のグリスを溶かして流してしまったりする恐れがあります。必ず**釣具メーカー純正の「リール専用オイル・グリス」**を使用してください。
Q2. メンテナンスしたのに飛距離が落ちました。なぜですか？
オイルの「注ぎすぎ」が原因の可能性があります。ベアリングにオイルが溜まりすぎると、それが抵抗となって回転を妨げます。余分なオイルは綿棒などで吸い取り、「薄く油膜を張る」程度を意識してください。
Q3. 分解図はどこで見られますか？
リール購入時に付属している説明書や、メーカー（シマノ・ダイワなど）の公式サイトのパーツリストページで確認できます。分解図を見ることで、どのパーツにオイルやグリスを注すべきか理解しやすくなります。
Q4. 海で使った後、数日放置してしまいました。どうすればいいですか？
気づいた時点ですぐに水洗いをしてください。ただし、すでに塩ガミしてハンドルが固着している（回らない）場合は、無理に回すとギアが欠ける恐れがあります。その場合は無理せずメーカー修理に出すことをおすすめします。また、ぬるま湯（30度程度）に浸して塩を溶かす方法もありますが、グリス流出のリスクがあるため自己責任となります。